来るとは言い切れぬ未来で待ち合わせ

青森市在住。日々の出来事について適当に書いています

米澤穂信「満願」を読んだ

ミカンズ

近頃は、これまで全然本を読まずに生きてきたくせになんの拍子か、読書ばっかりしている。4月25日に県立図書館で2冊借りてきたけど、もう2冊とも読み終えてしまった。返却時期は2週間後だが、追加で何か借りたい欲に駆られる。読みやすさも大きく影響するためなんとも言えないけど、次は3冊借りてみようかな。


今回読書感想文を書こうと思ったのは、2015年の「このミステリーが凄い」で1位を獲った米澤穂信の「満願」だ。短編集で6個の話が掲載されている。これはまたとんでもなく面白いものを読んだな~。youtubeでお勧めされてるやつとか、何かしらの賞を獲ったやつばかりを選んで読んでるからもはや、面白いのは当然みたいな感じになっているが。


6個の話に共通しているのは、どれも読み終えたらいや~な気持ちになるという「イヤミス系」であることだ。以前読んだ、同じく短編のイヤミス「許されようとは思いません」は、どの話も不幸すぎ、救いようが無さ過ぎたのかどうしても自分に合わなかったが、この満願はなぜだか、全話メチャクチャ自分に合って楽しめた(この二つの作品の合う・合わないの違いはなんなんだろう)。


また、もう一つこの小説を読んで感じたのは「伏線回収が鬼」だなということで、短編で短い話のくせに、伏線がしっかりと、それでいてあまりに何気なく書かれていて、それが見事に後半回収される。伏線の回収とともにズバッとオチが決まるから、読んでいて本当に気持ちが良い。素晴らしく良質な作り話を堪能できたなあ、と思う。


6つの話のうち自分が特に好きだったのは(全部好きだが)「夜警」だな。「夜警」は、取り乱し包丁を振り回す住人に向かって発砲、射殺するも、こちらも切りつけられて殉職してしまったという警官の話だった。世論は、警察の対応は悪くなかったという結果に落ち着いてはいたが、実際は殉職警官は全く持って警官に向かない男であって、むしろ「発砲する理由」が欲しく、事件そのものすら彼が引き起こしたものだった、というオチが面白い。


「柘榴」という話も凄かった。誰もが、好きにならずにいられない不思議な魅力の男がいるが、結婚する相手としては最低で、全然働かないし家にもいないし、育児家事も放棄している。ついに離婚を決意する妻は、父親と裁判で親権を争うものの、娘はまさか父親に着いて行きたいと表明する。この理由(オチ)がまた、娘が男として父親を獲得するためだったというのが衝撃的だった。


この人の作品で他に何があるかなと調べたら、今まさに映画でやっている「黒牢城」が直木賞を獲っていると。満願がこんなに面白いので凄く納得する。機会を見ていつか必ず読もうと思う。

●キャラクター:3ポイント

どの話の登場人物も個性的で面白い。短編集なので深堀りされることはさすがに無い。

●世界観・雰囲気:3ポイント

いろいろな職業が出てきて、内情が結構詳細に記述されている。それがそのまま世界観にもなっているように思えて面白い。

●ストーリー:4ポイント

短いながらも全部奥行きがあって面白い。そんなことになるか?みたいな箇所はあるにはあるけれども短編だから気にならない。

●読みやすさ:5ポイント

何と言っても短編がゆえに気軽に読み進められる。

●どんでん返し:3ポイント

伏線回収がメチャクチャ鮮やかで、なるほどそういうことか、そうなってしまうか、とストンと納得する感じ。どんでん返しとはちょっと違うような気はする。

×

非ログインユーザーとして返信する